※20年11月13日の日経に、続報(政府、システム統合支援)がありましたので、追記しました。
【記事の概要_日経201111】
日銀が、「経営統合」等を条件とする地域金融機関向けの新制度を発表した。
日銀は、「地銀再編」を訴える菅政権と足並みをそろえる。
銀行側は複雑な反応を示す。
⇒佐賀BK頭取「そのことで、再編に舵を取ることはない。一方で、結果的な支援にはなると思う。否定はしない。」
【記事の概要_日経201113】
政府は、地域金融機関の再編を促すための補助金を2021年夏に創設する。
地銀や信金が合併・経営統合に踏み切った場合は、国がシステム統合などの費用を負担する。
具体的なスキームは、預金保険機構の利益剰余金を財源として、金融機関の規模に応じて、20~30億円を補助する。
【ネット上のコメント_NewsPicksより】
~肯定的な意見~
・日銀にしては異例の制度設定で興味深い。地銀支援というよりは、経営改善へのインセンティブ。
・「政府は本気だ」というメッセージを伝えたいのでしょう。
~否定的な意見~
・今回の餌(インセンティブ)で経営統合が進むとしたら、そんな金融機関はむしろ要注意である。
・公的機関でもないので、当事者同士で経営統合をすればよい話。なぜに日銀が優遇制度まで作ってサポートをするのか?
・預金保険機構の剰余金を使うことの是非について、この剰余金があるのは、金融機関の破たんがないことが理由で、本来であれば預金料率の引き下げで剰余金を吐き出すのだ第一義のはず。こうした使い方は、暗黙の一般金融機関から一部機関への補助金になることから、業界としてのコンセンサスが筋ではないか。
・まさかの護送船団方式復活!
【思ったこと】
コメントを出している佐賀BKは、経営状況が厳しく、経営統合のうわさがよく聞かれる地銀の一つです。
佐賀BKの決算書分析をしてみました。
銀行の経営状況(収益性)を図る指標である、HR(営業経費/業務粗利益)は、18年度_98%⇒19年度_81%と、持ち直してはいますが、18年度の98%という数値は、地銀ワーストNO.2の低水準です。
(上記の試算によると、)要件(1_業績改善 or 2_M&A)を満たすことで、得ること出来る増益効果(インセンティブ)は、約2億円/年となっています。
営業経費が200億円/年を超える企業において、2億円/年の増益が、M&Aを進める動機付けになるでしょうか?
M&Aを行う場合、以下のようなメリット(シナジー)とリスク(コスト他)を総合的に考慮して意思決定をすると思いますので、少し検討をしてみました。
こうやって、眺めてみると、メリット6_今回の制度による金利の上乗せ(2億円)は、M&Aのメリットの「ごく一部の話」といえます。
一方で、メリット2_システム統合費用の補助(20~30億円)は、営業経費(≒販管費)が200億円程度の地銀(例_佐賀BK)にとって、M&Aのメリットとして、本質的なものとは言えないものの、付随的なものとしては、「非常に大きなもの」になるといえます。
NEWSPICKSのコメントにもあるように、私企業のM&Aに対して、全企業に適用できる事業再編税制等とは別に、特別なインセンティブを設定することは、市場の原理に逆らうことなので、制度設計として、無理があることは誰もが感じることだと思います。
しかし、無理やりにでも再編を進めないといけないほど、地域金融機関は追い込まれているとも読み取れると思います。
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