コロナ困窮者、債務減免/日経_201031

【記事の概要】

 金融庁、全国銀行協会は、新型コロナウイルスの影響で収入が減って困窮する個人や個人事業主の債務を減免・免除する特別措置を設けると発表。

 「自然災害債務整理ガイドライン」(2015年から適用)をコロナ禍にも適用する。

1_減免の対処となる債務

 1-1_20年2月1日以前に組んだカードローンや事業者ローンなどの債務

 1-2_20年2月2日~10月30日に受けたコロナ対応の特別貸付等


~以下はHP(http://www.dgl.or.jp 一般社団法人 東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関 )から抜粋~


2_減免とする条件

 2-1_コロナの影響により、収入・売上が減少し、借入金の弁済が出来ない又は近い将来において、弁済が出来なくなることが確実と見込まれること

 2-2_弁済について誠実で、財産状況を適正に開示していること

 2-3_基準日以前(2020年2月1日)において、期限の利益喪失事由(例_延滞)に該当する行為が無かったこと。ただし、当該対象債権者の同意がある場合この限りではない。

 2-4_本特則に基づく債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること

 2-5_債務者が事業の再建・継続を図ろうとする事業者の場合は、その事業の事業価値があり、対象債権者の支援により債権の可能性があること。

 2-6_反社会的勢力ではないこと。

 2-7_破産法に規定する免責不許可事由(例_財産隠し)がないこと。

 

3_具体的なスキーム

 法的倒産手続によらず、特定調停手続を活用した債務整理により債務 免除を行うことによって、債務者の自助努力による生活や事業の再建を支援する。




【思ったこと】

 コロナ禍により困窮する個人や個人事業主にとって、検討する価値がある制度だと思います。一方で、以下の点を考慮する必要があると思います。


1_マイナーな制度であること

 以下の通り、当ガイドラインによる債務整理成立件数は、100件/年 程度に過ぎず、全国の金融機関の数(約500行)からすると、極めてマイナーな制度あるといえます。

 上記の手続きに流れを見ると、まず第一段階として、取引金融機関からの「手続き着手の同意」を得ないと、その先が続かないようですので、取引金融機関が「知らない・経験が無い」場合、取引金融機関にこの制度を理解してもらわないと、検討して頂くこともできません。


2_「特定調停」であるので、債権者・債務者間の「同意」が必要であること

 当ガイドラインは、私的整理(法的整理の対義語として)なので、法的な拘束力がありません。つまり、債権者の「同意」が無ければ、進まない話です。

 実際問題として、「銀行が、直近で貸したコロナ融資について、現段階で減免・免除を受け入れる」ことについては、かなりハードルが高いことが予想されます。


3_どのようなケースで債務整理が成立するのか?

上記の(2_減免とする条件)に以下があります。

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 2-4_本特則に基づく債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること

============= 

 つまり、「当ガイドラインを使って、債務を圧縮し再建を図ることで、自己破産するケースよりも確実に回収額が増える」ことを再建計画等で証明し、債権者から同意を得ることが必要となります。

 この内容は、法人が債務免除を伴う経営改善計画を策定するケースと、類似する条件となるので、法人のケースにおけるポイント(信用力の補填、確実な返済原資)が参考になると思います。

つまり、以下のようなケースだと想像します。


・個人事業主であった飲食店オーナーシェフ(腕が良い)がコロナ禍により事業継続を断念。

・外食事業を営む大手事業会社(信用力が高い)に就職。オーナーシェフが債務返済を行うことを踏まえて、一定の給与水準を保証する雇用契約を用意。

 →信用力の補填

・オーナーシェフは、給与を返済原資とする再建計画を策定。

 →確実な返済原資

・金融機関は、既存債務を一定額(5年程度で完済できる額)まで減免することに同意する。

 




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