【記事の概要_201029】
定年後再雇用者の基本給減額の是非が問われた裁判(名古屋地裁)で、名古屋地裁は「同じ仕事なのに基本給が定年前の6割を下回るのは不合理」とした。
水町教授(東京大学)のコメント_仕事内容が変わらなければ減額は6割まで、という目安を示した点で画期的。正社員の基本給が相対的に高い企業の中には再雇用者の基本給を定年前の4~5割にしている例もあり、大企業を含め影響が出るだろう。
田村弁護士(労務管理が専門)のコメント_(基本給を6割にしても不合理ではないとした他の裁判例を踏まえて、)他の裁判例との整合性を意識した判決。運送業など一般的に定年前後で仕事内容が変わりにくい業界への影響が大きい。企業は基本給や賞与を引き下げる場合、仕事内容や責任範囲などの変化を踏まえ、バランスの取れた金額設定をすべき。
【記事の概要_201207】
13年の改正法施行以来、従業員が希望した場合に企業は65歳までの継続雇用を行う義務がある。
21年春には、70歳までの就業確保が企業の努力義務として課される見通し。
菅野百合弁護士のコメント_(20年10月の名古屋地裁の判決について、)そもそも(自動車学校の、)賃金水準が低すぎた点が問題。あくまで個別の問題。労働者が納得できる理由を用意し、労使間で十分に協議することが重要。単に定年後再雇用で長期的な雇用が見込めないという理由だけでは説明しきれない場合もある。
?弁護士のコメント(氏名の記載なし)_労働者からの訴えが増えることは間違いない。紛争化を防ぐために最低ラインは6割という認識は広まりそう。
【思ったこと】
中小企業において、影響がありそうなケースは以下であると想定します。
1_定年前に(管理職ではなかった)一般社員であった社員
例→製造業における職人 建設業における現場作業者
2_定年前後で職務内容・責任範囲に大きな変化なし
例→自分の工程におけるQCD(品質・コスト・納期)を守る
3_定年を迎え、再雇用し、基本給が下がるケース
管理職の社員に場合、定年後で役職を退く場合は、上記の2(職務内容・責任範囲)で変化があると思いますので、(基本的に、)今回の裁判例の範囲外と言ってよいと思います。
現場感覚として、以下の理由から、上記のケース(職人が定年を迎えて再雇用)で、基本給(時給ベース)が60%を切る事例はあまり見かけない印象です。(賞与が寸志に、家族手当等が無くなる等は見かけますが・・・)
1_定年になったからといって、その職人の仕事の質(QCD)が急に落ちるわけではない。
2_いきなり60%も下げたら、職人の「やる気」に影響が出る。
3_そもそも中小企業は万年の人不足で、シニア層の職人は貴重な人材・戦力である。
今回の裁判例は、人材が豊富な大企業や、待遇に特別に問題がある中小企業に影響が出るにとどまるのではないか? と思っています。
いずれにしても、名古屋地裁の裁判例に過ぎないので、今後の動向が気になるところです。
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