【記事の概要】
愛知県の信用保証協会2社が2020年4~9月の業績概要を発表した。
愛知県保証協会について、保証額が1.2兆円(前年同期間の6倍)となり、1948年の設立以降、最大となった。5月から始まった「実質無利子・無担保」融資が始まったことで保証額が急増した。
目先の資金繰りの目途が立った企業が増え、9月以降の保証額は落ち着いてきている。
また、HPの情報を追加すると、以下のことが分かる。
「コロナ禍の半年間で、保証残高と同額の保証を承諾した」
「職員1名当たりに企業数は約200社」
【思ったこと】
事業再生段階にある企業様のご支援において、保証協会付融資が受けられるか否か? は、資金繰りを検討する上で、重要な要素となります。
□審査の「2極化」
今回のコロナ禍における保証協会の対応は、企業によって「2極化」した印象です。
財務上の課題が少ない企業→非常に迅速に審査が下りる。
財務上の課題がある企業→(企業からすると、)納得いかない理由で審査が進まず、場合によっては、審査が下りない。
なぜ審査が進まないのか疑問であったのですが、今回の記事とHPの情報から、以下の予測が立ちました。
「キャパオーバーで、難しい案件は後回しにせざるを得なかった」
□保証協会付融資のしくみ_融資の決裁権は保証協会にあり
保証協会付融資は、万が一、企業が返済できない場合、銀行は、「代位弁済」をして、保証協会から回収をすることができます。
平常時は、この代位弁済できる債務の割合が、80%なのですが、コロナ融資では、100%となっています。
つまり、銀行は、ほぼノーリスクで融資をすることができる一方で、最終的なリスクは保証協会が負うことになるので、融資の決裁権は、保証協会にあると考えることができます。
□企業としてできる保証協会対策
保証協会の特性をまとめると以下となります。
・保証協会付融資の決裁権は保証協会。
・保証協会の審査は、基本的に「書類審査」のみで、企業訪問、ヒアリング等は無し。
つまり、銀行のプロパー融資と比べて、「書類」→決算書、試算表 の重要性が非常に高いと言えます。保証協会の担当者に分かりやすく・誤解を生まない決算書の作成が重要です。
□保証協会対策としての決算書作り
「紛らわしい勘定科目は使わない」_貸付金と工事前払金
銀行は、転貸資金(銀行が貸した資金を他の会社に貸すこと)に対して敏感ですので、「貸付金」の勘定科目の使用には注意が必要です。
~事例~
・同じ経営者で、企業グループ2社(工事会社と商社)を経営している。
・商社は工事会社に仕事を発注する場合において、「工事前払金」を支払う場合がある。
・「工事前払金」の残高は、商社が受注する工事の内容により増減幅が大きい。
・前期末は工事前払金の残高は、たまたま「0」であったが、当期末は、残高が多額な時期に決算を迎えた。
・経理担当者が、勘定科目として、本来は「工事前払金」として処理すべきところを、「貸付金」として処理をしていた。
・決算直前に時期に、商社は期末賞与資金として、保証協会から借入をしていた。(今期で唯一の借入であった。)
~保証協会の見方~
・決算書(前期と当期)だけを見ると、商社の借入金が、工事会社に流れたと見ることもできます。
~対策~
・商流(工事会社と商社の受発注、財、サービスの流れ)を説明する資料をBKに提出する。
・営業外債権(転貸)をイメージする「貸付金」は、極力使わず、営業債権をイメージする「工事前払金」「前払金」等の勘定科目を用いる。
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