楠木健『逆・タイムマシン経営論』(日経BP,2020)

【楠木健氏の紹介】

 著者は「ストーリーとしての経営戦略」で有名な、一橋大学教授の楠木健氏です。同書は、本格的な経営学の書籍にも関わらず、20万部を超えるヒット作となっています。

 以下がまとめ資料になりますので、参考にしてください。

  同書には、数々のキラーワードがあります!

■競争優位は、戦略の構成要素(打ち手)の相互効果に立脚している。各構成要素自体では、競争優位は生まれにくい。

 →ただ、安い・美味しいだけetc。。。。


■キラーパス(一見して非合理な打ち手)をつくこと

 →キラーパスはそれだけでは、一見して非合理だけれども、ストーリー全体の文脈に位置付けると強力な合理性を持っている。

 →例:スタバの直営方式

  →スタバのコンセプト(サードプレイス)を維持するためには、ぱっと見で非合理である直営方式(本部にとって高コスト、成長スピードでFC方式に比して劣る)による、コンセプトを徹底することが必要不可欠であった。


■抽象化で本質を掴む

 抽象化(冷凍)と具体化(解凍)を繰り返すことで物事の本質が見えてくる。抽象化することで、一見、関係のなさそうな他業界の事象にも同じようなストーリーがあることに気づく。抽象化しなければ、知見の利用範囲が極めて狭くなる。抽象的な論理は、そう簡単には変わらない。


【この書籍の概要】

 逆タイムマシン理論とは、以下をいう。

1_やり方_過去の新聞雑誌を一定期間(10~20年)寝かせて読む。

 →誰かが考察した歴史書ではなくて、「史料」に直接あたる。

  →時系列で並べ、変化・不変を見る。


2_効果1_変化を振り返ることによって、不変の本質が浮き彫りになる。

 →これを、「文脈思考」という。


3_効果2_同理論を実践することで、「同時代性の罠」に惑わされない経営知を得ることが出来る。

「同時代性の罠」とは、以下の分類することが出来る。


A_飛び道具トラップ

 AI、IOT、DXなどの流行りの「飛び道具」的な経営トレンドを、過大評価しがち。

 例_評価制度を導入することで、様々な経営課題が一気に解決すると過剰に期待する。 

 例_特殊な経歴を持つ新入社員に過剰に期待をする。


B_過渡期トラップ

 「今こそ激動期!」といつも言っている。

 例_外部環境の変化(会社の属する市場)と自社の業績は必ずしもリンクしない。


C_遠近歪曲トラップ

 遠いもの(アメリカのシリコンバレー、他社)ほどよく見え、近いもの(日本型経営、自社)ほど粗が目につく。

 例_隣の芝は青く見える。(他社は過剰に良く見えて、自社は過剰に粗を探す。)


【12章_半世紀に渡って「崩壊」を続ける「日本的経営」の紹介】

1970~80年代における日本的経営の評価

欧米_「JAPAN AS NO.1」

日本_日本的経営は通用しない、外資企業は脅威だ


 人間の認知のバイアス(人間の本能)に基づくもの、近いものの粗が「見える」だけではなく、粗ばかりを見ようとし、遠いものを「過剰に良いもの」に見てしまう。

 →この傾向が遠近歪曲トラップを増幅している。

 時空間を広くとって考え、どこに問題の本質があるのか、まずは問題の本質を掴むことが大切。


【思ったこと】

楠木氏は、「おわりに」で以下の指摘をしています。


 日々接しているメディア(新聞、雑誌、ウェブサイト)は、「ファストメディア」に分類される。

皮肉なことに、情報を入手するコストは低下し、スピードが増すほど、本質的な論理の獲得が難しくなる。

 読み手に完全な集中を求める「スローメディア」(本)と向き合う必要がある。

 →著者の独自の視点で事象をつかみ、その切口の上に本質的な考察と洞察を展開する良書を読む。


 いわゆる「定番の書籍」を読むことで、「抽象化で本質を掴む」ことの重要性・必要性を再認識しました。

 

 

 

 











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